「このままじゃ無理だ」
5か月目のカレンダーを見つめながら、思わず口に出た。
最初の1、2か月目はそれなりにやる気があった。
週に2〜3回ジムに通って、運動も続けていた。
実際、体重も少し減っていたし、筋肉痛が日常になるくらいには頑張っていたと思う。
でも、3か月目あたりから、少しずつ足が遠のいた。
4月に入ってからは引越準備が本格化して、ジムどころじゃなくなった。
毎週末、段ボールを買いに行ったり、不用品を処分したり。
体を動かしてはいたけど、運動ではなかった。
気づけば、体重がじわじわ戻りはじめていた。
5か月目の今、完全にリバウンドして、スタート地点とほぼ同じ体重。
いや、むしろちょっとだけ増えてる。
これは、笑えない。
本来なら、1年で12kgやせるには毎月−1kgのペースが必要だ。
でも、前半5か月を無駄にした時点で、そのペースは完全に崩れている。
──いや、違う。
崩れたままではダメだ。
ここで巻き返さないと、また「来年こそは」になってしまう。
だからこそ、5か月目と6か月目でそれぞれ−3kg。
2か月で合計−6kgを達成して、ようやく毎月−1kgペースに戻れる。
……。
「1か月−3kg?そんなの不可能だ!」
頭の中でそう叫んでいた。
リバウンドしてスタート地点に逆戻りした今の自分には、とても現実的とは思えなかった。
そのとき、ふと以前 知り合いの鍼灸師に言われた言葉を思い出した。
「ダイエットはね、摂取より消費が上回ればいいだけだよ」
それだけ?と思ったけど、今になって妙に響く。
結局それしかないのかもしれない。
すがる思いで、AIに頼ることにした。
「脂肪1kgって7200kcalらしいよ」
「毎月1kg落とすと、1年間で合計12kg、つまり86,400kcalを減らす必要があります」
数字で言われると、余計にリアルで怖い。
「3kgやせるには1か月で21,600kcal、つまり1日あたり約720kcalですね」
「……やばくない?」
「大丈夫です、ゆるおさん。摂取を減らして、消費を多くすればいいだけです」
……簡単に言うよな。
というわけで、どう減らして、どう増やすかを考えてみた。
消費カロリーアップ作戦
まず、自転車通勤を徒歩通勤に変えた。
片道40分、往復で1時間20分。
歩数は軽く1万歩を超えるし、消費カロリーも300〜400kcalにはなる。
時間はかかるが、これなら毎日確実に稼げる。
粉末のVAAMを使ってみることにした。
運動前や出勤前に飲めば、少しでも代謝が上がるような気がしたからだ。
ついでにシェイカーも1本用意して、水はケースでまとめて注文。
「これでやる気出た気になるなら安いもんでしょ」なんて思いながら、とにかく形から入った。
最初は正直キツかった。
特に朝、家を出る時間を早めないといけないのがつらい。
でも、AIは言った。
「ゆるおさん、毎日の行動が体を作ります」
くやしいけど、正論だった。
摂取カロリー削減作戦
食事の工夫として、白米を減らすことにした。
ずっと1膳(150g)だったのを、思い切って0.7膳(105g)に。
たった45gと思うなかれ。
白米は1gあたり約1.68kcal。
つまり約75kcalカットになる。
朝はオートミールにプロテインをかけて食べた。
味にこだわったブランドらしく、朝からデザートを食べてるみたいでよかった。
昼はお弁当、これも量を減らした。
女性のお弁当箱は小さいな、そんなの食べた内に入るのか?と思っていたけど、似たような量になってしまった。
ご飯を減らすのは絶対いやだと思っていたけど、やってみれば慣れてくるもので、少なくても満足感を得られるようになった。
どうしてもお腹がなるようだったら、ミックスナッツを一つまみ、シュガーレスガムなどでやり過ごした。
【だいたいの入力で十分、AIで収支チェック】
とにかく細かく記録していくのは途中で面倒になって長続きしないだろう、と思った。
だから、とりあえず食べたものと動いたことだけをAIに報告することにした。
「今日は昼におにぎり2個」「帰りに40分歩いた」――そんなざっくりで十分。
AIに報告して一日の記録をまとめてもらったら、合計で約−720kcalになっていた。
もともと歩くのが苦じゃないのも大きかったかもしれない。
「これ、思ったよりいけるかも?」と、ちょっとだけ前向きな気持ちが湧いてきた。
720kcalを毎日減らす。
たしかに無茶に聞こえる。
でも、やってみると、案外できることがあった。
苦手なダイエット法はやらなくていい、自分が得意なこと、苦にならないことだけを選べばいい。
摂取の工夫と消費の工夫、少しずつの努力でもかけ合わせれば効果は大きい。
これなら簡単に続けられるかも。
そう思えた、5か月目の再スタートだった。
そして実際、この月だけでなんとか3kgのダイエットに成功した。
やればできる——その実感が少しだけ戻ってきた。
翌月には、さらに思いもよらない発見もあった。